【タジキスタン】世界の屋根と自転車素人#02 「到着前の語り」
(前回↑の続き)
不意に目を覚ますと、飛行機はひたすらに乾燥した山々の上を行っていた。窓からの景色はあまりに変化しないので、飛行機がどれほど進んだのかは見当も付かずに僕はまた眠ってしまった。
言わせていただくと、
ところで、タジキスタンと聞いてあなたは何を思い浮かべるだろうか。この旅を計画するにあたって僕はこのことについて考えてみた。
・・・何も思い浮かばなかった。
強いて挙げるなら、サッカーW杯の予選で日本に8―0で負けていたのを思い出したぐらいだ。かといってタジキスタンについて調べ始めたところで、この状態はそれほど変わらなかった。なにしろ情報が少ない。あの「地球の歩き方」でタジキスタンが取り扱われているのはわずか3ページで、ネット上の旅行情報も少ない。情報があったとしても、それは百戦錬磨の玄人バックパッカーと海千山千の玄人チャリダーのブログばかり。正直、参考にならない、できない、したくない。
更に言わせていただくと、そんな経験豊富な彼らのブログですら口を揃えて「タジキスタンは面倒臭いのに、見どころが無い」と言うもんだからタジキスタンに対する心証はこの時点でかなり悪かった。
続きを読む烏魯木斉の映画館で「万引き家族」を観る(ウルムチ・後編)
烏魯木斉でやったことと言えばこれに尽きる。
「万引き家族」といえば是枝裕和監督作品でカンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞したことでも名高い2018年の注目の映画の一つである。烏魯木斉の片隅に或る「十月影剧院」という映画館でこの作品を観た。「万引き家族」。大前提として万引きは間違いなく犯罪行為なのだけど、正義とは何か。正しさとは何か。を問うてくる作品で、リリーフランキーや安藤サクラの演技もさることながら子役の二人の演技やキャラクター設定の妙が光っていたし、即物的な魅力を挙げるなら松岡茉優のビキニ姿の谷間だけが大写しになるシーンが数秒あるよ!見てね!といったところだろう。つらつらと「万引き家族」の魅力や感想を書いてもいいのだけれど、僕に求められているのはそっちじゃない気がする。多分、「なぜ僕が中国の果ての映画館でこの作品を観ることになったのか」だ。また、こんなことを言われそうだ。おい、観光もせず、海外っぽいこともせず、何してんだよ、よくそんなんで烏魯木斉にまつわる生意気な雑文投稿してんな、と。あぁ。お前の言い分は分かる。充分に分かるから、俺に言い訳をさせてくれ。
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