【タジキスタン】世界の屋根と自転車素人#02 「到着前の語り」

 

(前回↑の続き)

 

不意に目を覚ますと、飛行機はひたすらに乾燥した山々の上を行っていた。窓からの景色はあまりに変化しないので、飛行機がどれほど進んだのかは見当も付かずに僕はまた眠ってしまった。

 

言わせていただくと、

ところで、タジキスタンと聞いてあなたは何を思い浮かべるだろうか。この旅を計画するにあたって僕はこのことについて考えてみた。

 

・・・何も思い浮かばなかった。

強いて挙げるなら、サッカーW杯の予選で日本に8―0で負けていたのを思い出したぐらいだ。かといってタジキスタンについて調べ始めたところで、この状態はそれほど変わらなかった。なにしろ情報が少ない。あの「地球の歩き方」でタジキスタンが取り扱われているのはわずか3ページで、ネット上の旅行情報も少ない。情報があったとしても、それは百戦錬磨の玄人バックパッカーと海千山千の玄人チャリダーのブログばかり。正直、参考にならない、できない、したくない。

更に言わせていただくと、そんな経験豊富な彼らのブログですら口を揃えて「タジキスタンは面倒臭いのに、見どころが無い」と言うもんだからタジキスタンに対する心証はこの時点でかなり悪かった。 

 

更に、更に言わせていただくと、もともとタジキスタンの航空会社「サモンエアー」で購入していたウルムチドゥシャンベ行のフライトが5日前にいきなりキャンセルになったことでこの国に対するマイナスイメージが強まった。このフライトのキャンセル、理由は不明で、サモンエアー側からのフライト変更等の対応や補償もなく、ただただ返金をするのみだという。マトモな航空会社では考えられない対応で、ハタ迷惑な話だが仕方がないので、僕らは翌日の中国南方航空のチケットを購入せざるを得なかった。ちなみに、僕らのチケット代金5万4120円は5週間たった今なお返金されていない。

サモンエアー二度と使うかボケ。

 

この際だから、更に、更に、更に言わせていただこう。フライトを翌日に変更したことでタジキスタンへの入国日が一日遅れることとなった。ネット上には「入国日がビザに記載されている入国予定日と異なっていると入国できない場合がある」との情報があり、僕は万が一に備えタジキスタン入国管理局に問い合わせのメールを送った。

 

「観光で貴国を訪問しようと予定しているのですが、オンラインの観光ビザについて問い合わせたいことがあります。元々8月11日に入国する予定でオンラインビザを取得していたのですが、予約していたフライトが航空会社によってキャンセルされたために、翌日8月12日の別のフライトを予約しました。この場合、当初のビザで貴国に入国することは可能でしょうか?ご返事お待ちしております。」

 

この英語のメールに対して、タジキスタン入国管理局がよこした返信は

 

「いいよ。(sure)」

 

お前、新学期早々2学期のノリで喋ってくるヤツかよ。そうして、僕のタジキスタンへの印象は悪化の一途を辿っていった。

 

 はじめての中央アジア

大きな衝撃で目が覚めた。飛行機はドゥシャンベ空港へ着陸していた。空港は首都とは思えないほど小さくて寂しい。ボーディングブリッジは2つしかなく、駐機している飛行機はない。窓から見渡しても今まさに飛び立とうとしている一機だけが見えるのみで、それはあのサモンエアーだった。飄々と進んでいく姿が少しだけムカついたけれど、それが離陸してしまってからは僕らの乗る中国南方航空の機体のみが空港で唯一の飛行機になってしまい、その気持ちのやり場に僕は困ってしまった。肩透かしを食らったような地に足つかないこころのまま飛行機を降り、小さなターミナルのイミグレーションを意外にも問題なく通過して自転車を受け取る。

 

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ターミナルを抜けると暑くて乾燥した空気が体を包み、強烈な日差しが刺さって、僕は

。なんとなく中央アジアには涼しい草原のイメージがあったので、驚いた。この日の最高気温は39度。「太陽のふもとの国」それがこの国の別名らしかった。

 

初めての中央アジア、初めてのタジキスタンの旅が始まる。結論から言えば、僕らはこの国に16日間滞在し、当初持っていた最悪のイメージは払拭された。だからといってこの国に良いイメージを持てるかといったら話は別だ。というのも、この国で過ごしたのは、ある意味で過去最悪の旅路だったからである。

 

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